monologue〜今宵、盗みます〜 シナリオ

Epilogue

「お嬢さん、そういえば名前はなんていうんだい?」
ジェラールは女性の手を引きながらいう。

「エリーゼです。」
女性ははっきりと答える。その表情はこの先にある期待に満ち溢れていた。

「きれいな名前だな見た目も心もきれい、名前もきれい。
だが、"エレガント"じゃねぇな。」

「どうすれば"エレガント"になれますか?」

「そうだな・・・。まぁ、君みたいな娘は外の空気を吸えば
自然にエレガントになっていくんじゃねぇか?」

「"外の空気"ですか?」

「そう、外の空気だ。この屋敷の外の世界ってやつは、
もしかするとエリーゼが思っているほどきれいなもんじゃないかもしれないな。

そう、行ってみりゃ、ミレーの『晩鐘』みてぇな牧歌的な世界はこの社会の一部でしかねぇんだ。

そりゃもう、このパリの街一つとっても、君みたいな令嬢もいれば、俺みたいな大怪盗もいる。
色んな連中が泣いたり笑ったりしてこの街を作ってるんだ。

そんな色んな人間の作る雰囲気ってやつに触れれば、
間違いなくエリーゼは"エレガント"な女性になるだろうよ。」

「そう・・・ですか・・・。」
早くもこれから目にするだろうパリの街を想像してか、エリーゼの目は輝く。

「と、いうことで、"エレガント"になる女を盗んだってことで、今回は勘弁してくれ、ブリジット!」
笑いながらジェラールは言う。

「・・・今回だけですよ。」
ブリジットは不機嫌そうに答える。

目当ての絵画を盗み損ねただけが原因ではなさそうだが。
そのやり取りを聞いてエリーゼは我に返る。

「そうでした!『晩鐘』は宜しいのですか?」

「エリーゼが"エレガント"な女性になったら、その手間賃として頂くことにしよう。」

「あなたが無理矢理連れ出したんじゃないですか、・・・泥棒さん。」

「"エレガント"じゃねぇな。」

こうして世間知らずなお嬢様を加えた大怪盗一味は、笑いながら夜の街へと消えていった。

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